今回は、株式投資でよく使われるテクニカル分析の一つ、ボリンジャーバンドについて解説していきます。
トレンド相場において、「バンドウォーク」という言葉を見聞きすることがあると思います。
このバンドとは、ボリンジャーバンドの1σ~2σもしくは-1σ~-2σの空間のことです。
バンドウォークは、上記の範囲をN字を描きながら値動きが経過していく現象のことです。
トレンド相場では、バンドウォークが起こることが多く、押し目の発生時期を予測するのに役立ちます。
また、3σもしくは-3σは買われ過ぎ・売られ過ぎの水準とされ、FOMOによるツッコミ買いやツッコミ売り、狼狽売りを防ぐのにも役立ちます。
その他にもさまざまな使い方がありますので、ボリンジャーバンドの基礎からお話していきたいと思います。
ボリンジャーバンドとは?
ボリンジャーバンドは、アメリカ人のジョン・ボリンジャー氏が考案したテクニカル分析のインジケーターです。
移動平均線と標準偏差を組み合わせたインジケーターで、株価の変動幅やトレンドの強弱を見ることができます。
ボリンジャーバンドは以下の式で計算されます。
各内容は以下のとおりです。
- :ボリンジャーバンド
- :移動平均線(通常は20日間)
- :定数(通常は2)
- :標準偏差(通常は20日間)
ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心に、標準偏差を上下に加減したバンドを描きます。
標準偏差とは、株価の変動度合いを表す統計的な指標で、大きいほど株価の変動が激しいことを意味します。
ボリンジャーバンドは、以下のようにチャートに表示されます。
各線の内容は以下のとおりです。
- 緑色の線が短期移動平均線(5SMA)
- 中央の橙色の線が中期移動平均線(25SMA)
- 赤色の線が長期移動平均線(75SMA)
- 上下の青線が標準偏差2倍のバンド(±1σ)
- 上下の紫線が標準偏差2倍のバンド(±2σ)
- 上下の橙線が標準偏差3倍のバンド(±3σ)
となっています。
通常は、±1σ~±2σのバンドを見ることが多いですが、±3σのバンドも表示することで、より極端な株価の動きを捉えることができます。
ボリンジャーバンドの特徴は、バンドの幅が株価の変動に応じて変わることです。
バンドの幅が狭くなるときは、株価の変動が小さくなっていることを示し、バンドの幅が広くなるときは、株価の変動が大きくなっていることを示します。
また、バンドの形状や傾きも、株価のトレンドや勢いを表します。
バンドが平行になっているときは、株価が横ばいに推移していることを示し、バンドが上向きや下向きになっているときは、株価が上昇トレンドや下降トレンドにあることを示します。
さらに、バンドに沿って株価が動いているときは、トレンドが強いことを示し、バンドから外れて株価が動いているときは、トレンドが弱まったり反転したりする可能性が高いことを示します。
ボリンジャーバンドは、これらの特徴を利用して、株価の変動幅やトレンドの強弱を見ることができるインジケーターです。
ボリンジャーバンドの基本的な使い方
ボリンジャーバンドの基本的な使い方は、以下の3つです。
- バンドタッチで逆張り
- バンドブレイクで順張り
- バンドウォークでトレンドフォロー
バンドタッチで逆張り
バンドタッチで逆張りとは、±3σのバンドに株価がタッチしたときに、その反対方向にエントリーする戦略です。
上昇トレンド中であれば、+3σのバンドに株価がタッチしたら売り、下降トレンド中に-3σのバンドに株価がタッチしたら買いです。
±2σにタッチしたらという見方もあるようですが、±2σにタッチした後に反落したとしても、±1σで反発することが多く、取れる値幅の期待値が低いですし、±1σタッチから反発し、トレンドフォローの大き目のローソク足1本で捲られることが多いので、わたしは使いません。
百聞は一見に如かず、実際のチャートを見てみましょう。
①および②の赤丸ですが、±3σのバンドにタッチして反転したことが分かりやすいですね。
①が買われ過ぎ(急騰のオーバーシュート)であり、②が売られ過ぎ(急落のオーバーシュート)です。
わずか1週間での大きな値動きではありますが、①・②のどちらのポイントについても上髭、下髭は±3σの線を越えていますが、実体は見事におさまっています。
これは、売買しているトレーダーの多くがボリンジャーバンドを参考にトレードしている証拠とも言えるでしょう。
このように、バンドタッチで逆張りすることで、ド短期の値幅を取ることができます。
ただ、この戦略には注意点もあります。
- トレンドが強い場合は、バンドタッチだけでは反発しない場合もある
- バンドタッチ後に反発するまでに時間がかかる場合もある
- 反発した後に再び同じ方向に動く場合もある
②のポイントで逆張りの買いを入れた場合が該当します。
-3σでエントリーしても利益が出せた期間はわずか1日であり、このタイミングで利確しておかないと延々と-1σ~-2σのバンドウォークに引きづられることになりました。
そして、なにより難しいのは、先の動きは読めないということですね。
つまり、バンドタッチだけではエントリーのタイミングや利確・損切りのタイミングを判断するのは難しいということです。
そのため、バンドタッチで逆張りする場合は、以下のようなポイントに注意してください。
- トレンドの方向や強さを確認する
- バンドタッチの前後で株価の動きやボリュームに変化があるかどうかを見る
- 他のテクニカル分析やファンダメンタルズ分析と併用する
- ストップロスやトレイリングストップを設定する
これらのポイントを意識することで、バンドタッチで逆張りする際のリスクを減らすことができます。
バンドブレイクで順張り
バンドブレイクで順張りとは、±2σのバンドを株価が突破したときに、その方向にエントリーする戦略です。
例えば、上昇トレンド中に+2σのバンドを株価が上抜けしたら買い、下降トレンド中に-2σのバンドを株価が下抜けしたら売りです。
この戦略の理由は、±2σや±3σのバンドは株価の極値を表す場合が多く、そこから突破するということは、株価の勢いが強くなっていることを意味するからです。
実は、ボリンジャーバンドの正当な使い方は、このトレンドの発生の見極め+順張りでのトレンドフォローを行うために使います。
わたしの印象ですが、ボリンジャーバンドの使われ方は先に紹介した逆張りのため(買われ過ぎ・売られ過ぎの判断)に使われることが多いように思いますが・・・
先ほどのチャートをもう1度見てみます。
②のポイントで-3σにタッチし、一時的な売られ過ぎから反発しましたが、-2σと5日移動平均線に頭を押さえられる形で下降トレンドが発生し、その後は-1σ~-2σのバンドウォークが続きました。
このように、バンドブレイクからの一旦の反発を見届けた後、順張りでエントリーすることで、トレンドに乗ることができる可能性が高くなります。
ただし、この戦略にも注意点もあります。
- バンドブレイク後に反転する場合もある
- バンドブレイク後に一旦戻ってきてから再び同じ方向に動く場合もある
- バンドブレイク後に横ばいになる場合もある
つまり、バンドブレイクだけではエントリーのタイミングや利確・損切りのタイミングを判断するのは難しいです。
そのため、バンドブレイクで順張りする場合は、以下のようなポイントに注意してください。
- トレンドの方向や強さを確認する
- バンドブレイクの前後で株価の動きやボリュームに変化があるかどうかを見る
- 他のテクニカル分析やファンダメンタルズ分析と併用する
- ストップロスやトレイリングストップを設定する
逆張り時と同じですね。
結局のところ、ボリンジャーバンドのみで値動きを判断するのは危ないということです。
バンドウォークでトレンドフォロー
バンドウォークでトレンドフォローとは、±1σや±2σのバンドに沿って株価が動いているときに、その方向にエントリーする戦略です。
例えば、上昇トレンド中に+1σや+2σのバンドに沿って株価が上昇しているときは買い、下降トレンド中に-1σや-2σのバンドに沿って株価が下降しているときは売りです。
この戦略の理由は、±1σや±2σのバンドに沿って株価が動いているということは、トレンドが強く安定していることを意味するからです。
先ほどのチャートを再度見てみます。
③の長い下降トレンドをショートで取れればおいしいですよね。
ただ、-2σタッチのタイミングでエントリーしてしまうと、-1σタッチまでの調整をがまんしなければならないことが多いため、-1σタッチでの順張りエントリーを心がけたいところです。
もちろん、-1σを上方にブレイクしていくこともありますので、その際は即ロスカットです。
ボリンジャーバンドの応用的な使い方
ボリンジャーバンドの応用的な使い方は、以下の3つです。
- ダイバージェンスで反転シグナルを見る
- スクイーズでボラティリティ拡大を予測する
- マルチタイムフレーム分析で相場全体を把握する
それぞれ詳しく見ていきます。
ダイバージェンスで反転シグナルを見る
ダイバージェンスとは、株価とインジケーターの動きが逆行する現象のことです。
MACDの解説でも出てきますね。
例えば、上昇トレンド中に株価が高値を更新しているのに、ボリンジャーバンドが下落している場合や、下降トレンド中に株価が安値を更新しているのに、ボリンジャーバンドが上昇している場合です。
このような場合は、株価とボリンジャーバンドの間にダイバージェンスが発生していると言います。
ダイバージェンスは、株価のトレンドが弱まったり反転したりする前兆として使われます。
ダイバージェンスが発生した後に、株価は反転する傾向があります。
ただし、ダイバージェンスは必ずしも反転するとは限らないので、他の要素と併せて判断する必要があります。
また、ダイバージェンスには以下のような種類があります。
- レギュラーダイバージェンス:株価とボリンジャーバンドの動きが逆行する場合。トレンドの反転を示唆する。
- ヒドゥンダイバージェンス:株価とボリンジャーバンドの動きが同方向に進む場合。トレンドの継続を示唆する。
このように、ダイバージェンスを利用することで、トレンドの反転や継続のシグナルを得ることができます。
スクイーズでボラティリティ拡大を予測する
スクイーズとは、ボリンジャーバンドの幅が狭くなっていく現象のことです。
スクイーズは、株価の変動が小さくなっていることを示し、ボラティリティが低下していることを意味します。
スクイーズが発生すると、株価はレンジ相場になりやすく、方向感が定まらない状態になります。
いわゆる日柄調整という状態ですね。
しかし、スクイーズは長く続くものではなく、ある程度続くとボラティリティが急激に拡大することがあります。
このとき、株価は大きく動き出し、ボリンジャーバンドの幅も広がります。
この現象をエクスパンションと呼びます。
エクスパンションは、株価のトレンドが始まったり加速したりする可能性が高いことを示します。
実際のチャートを見てみます。
①の部分でボリンジャーバンドの幅が狭くなっており、スクイーズ(調整相場入り)している状態です。
ボラティリティが低下していることを示しています。
レンジ相場とも言いますね。
②の部分で、一度3σにタッチするまで上昇し、反転したものの1σに支えられ反発し3σに沿いながら一気に上昇しています。
この際、スクイーズしていたボリンジャーバンドは幅を広げ、エクスパンションしています。
水平線の考え方やレンジ相場の考え方から見ても上方へのブレイクアウトが確認でき、上昇トレンドの発生が見てとれます。
ボリンジャーバンドだけ見ていると②のポイントでのエントリーは難しく、この上昇を取るのは難しいかもしれません。
ただ、②の上昇により、ボリンジャーバンドはエクスパンションしていますので、次の1σタッチの場面からの2σとのバンドウォークは取りたいであり、1σタッチから上昇しはじめるところでのエントリーは逃したくありません。
実際、③の大きな上昇トレンドは基準線タッチを起点に始まっています。
そのまま下抜ければ下降トレンド入りもありえるポイントですので、少々怖いかもしれませんが絶好のエントリーポイントというのは恐怖を伴うものです。
理論をバックにえいやでエントリーし、ダメなら即ロスカットという考えでおもいきってエントリーしましょう。
このように、スクイーズを利用することで、ボラティリティ拡大のタイミングを予測することができます。
マルチタイムフレーム分析で相場全体を把握する
ボリンジャーバンドに限った話ではありませんけどね・・・
マルチタイムフレーム分析とは、複数の時間足のチャートを見て相場全体を把握する方法です。
例えば、日足や週足で長期的なトレンドや重要なサポート・レジスタンスを見てから、1時間足や15分足で具体的なエントリー・エグジットのタイミングを見るような感じです。
マルチタイムフレーム分析をすることで、以下のようなメリットがあります。
- 相場の流れや方向性を確認することができる
- 短期的なノイズや誤ったシグナルを避けることができる
- 確率的に有利なトレードセットアップを見つけることができる
例えば、以下のような手順でマルチタイムフレーム分析をすることができます。
- 日足や週足で長期的なトレンドや重要なサポート・レジスタンスを見る
- 1時間足や4時間足でボリンジャーバンドの形状や傾きを見てトレンドの強弱や方向性を見る
- 15分足や5分足でボリンジャーバンドのバンドタッチやバンドブレイクを見てエントリー・エグジットのタイミングを見る
このように、マルチタイムフレーム分析をすることで、相場全体を把握しやすくなります。
ボリンジャーバンドの注意点とコツ
ボリンジャーバンドは、株式投資において非常に有用なテクニカル分析のインジケーターですが、それだけに頼ってしまうのは危険です。
ボリンジャーバンドは、あくまでも株価の変動幅やトレンドの強弱を示すものであり、必ずしも正確なシグナルを与えるわけではありません。
ボリンジャーバンドに心酔しすぎて、水平線やトレンドラインなどをおろそかにするのはよくないですし、他のテクニカル分析も考慮してがんじがらめになり、エントリーできないというのでは元も子もありません。
ボリンジャーバンドの使用方法の中で、「これは自分に合った使い方ができそう!」という使用方法を見つけ出し、その方法のみトレードに取り入れるという使い方がほどよいと思います。
最後に
ボリンジャーバンドは以下のような特徴を持つテクニカル分析のインジケーターです。
- 移動平均線と標準偏差を組み合わせたインジケーターである
- バンドの幅や形状や傾きで株価の変動幅やトレンドの強弱を見ることができる
- バンドタッチやバンドブレイクやバンドウォークでエントリー・エグジットのタイミングを見ることができる
- ダイバージェンスやスクイーズで反転やボラティリティ拡大のシグナルを見ることができる
- マルチタイムフレーム分析で相場全体を把握することができる
ボリンジャーバンドは、株式投資において非常に有用なテクニカル分析のインジケーターです。
いままでボリンジャーバンドを使ったことがないという方、当記事でこのような使い方もあるのかと思った方は、いろいろとお試ししてみてください。
最後に念のために書かせていただきます。
投資は自己責任でお願いします。
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